5分で読む『サピエンス全史』|虚構に生きるホモ・サピエンス

5分で読む
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今回は、ユヴァルノアハラリ氏を世界レベルの著名人へと押し上げた、サピエンス全史について書きます。
氏の著書で翻訳されているものは、マクロな歴史を描いた「サピエンス全史」、強大な力を手にしたホモ・サピエンスの行く末を描いた「ホモ・デウス」、そして以前紹介したサピエンスという種がイマ直面する課題と教訓について描いた「21Lessons」があります。
下記もぜひご覧ください。

5分で読む『21Lessons』|未来がどうなるか誰にもわからないが、備えることはできる
本書は、「サピエンス全史」で一躍時の人となったユヴァル・ノア・ハラリ氏の最新著書です。 「サピエンス全史」では、アフリカで生まれた取るに足らないちっぽけなホモ・サピエンスという種がなぜ世界の覇王として君臨するに至ったかという歴...

原題は”Sapiens: A Brief History of Humankind”で、直訳すると「サピエンス:人類史概要」となります。
元々、イスラエル人である著者が2011年にヘブライ語で書いたものが2014年に英訳され、2016年に日本に上陸し、ビル・ゲイツやマーク・ザッカーバーグが推したことも手伝って、瞬く間にベストセラーになりました。

著者の歴史学者としての主張は一貫しています。

サピエンスは虚構の力によって栄華を極めた。
歴史をきちんと認識することによって、現在の選択に活かす。

さて、本書の大きな特徴は、その始まりにあります。大抵、通史の本といえば、ホモ・サピエンスが世界を蹂躙したあとの世界のことについて書かれていますが、本書は、ホモ・サピエンスが生まれてから、他の人類種がいる中で、どのようにして主として世界の頂点に立ったか、というところから書かれています。そしてもう一つ、最後は、そうして果たして「人類(サピエンス)は幸福になったのか?」というところまで言及している点も特徴と言えるでしょう。

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まず、ホモ・サピエンス以外にも人類種がいた。

例えばネアンデルタール人(ホモ・ネアンデルターレンシス)は皆さんもご存じだと思います。我々サピエンスとは、属は同じだが、種が異なる人類種のことです。ちょうどライオンとトラの関係と同じで、一世代くらいであれば混合種をつくることができますが、生まれた子には生殖能力がなく基本的には交じり合わないのです。

他にも、何種類かの人類種が同時期に存在していたことが確認されています。
さらに、我々人類種は、他の動物たちにとって取るに足らない存在であったはずであると指摘します。つまり、身体も小さく、筋肉量でも圧倒的に劣る我々は、弱肉強食の世界では非常に弱く、ハイエナのハイエナをすることで生き延びていたというのです(器用な手指を使って栄養価の高い骨髄を吸うことができた!)。

では、このような自然界においては取るに足らないちっぽけな人類種のうちの一種である我々ホモ・サピエンスが食物連鎖の頂点に君臨し、全世界を支配したのはどうしてなのでしょうか。

認知革命-共主観的現実

著者は、ホモサピエンスには1つの特別な力が備わったと説きます。
それは、虚構を創りあげ、それを大勢で信じる能力だといいます。(宗教、国、貨幣、法律、会社…)このことによって、サピエンスは大勢(数百人規模)での協力が可能となり、全世界を蹂躙しました。

いろんな現実

  • 客観的な現実  :物理法則など私達がいなくてもそこにあるもの。
  • 主観的な現実  :自分(個人)の中にだけあるもの、感情など。個人が消えれば、消える。
  • 共主観的な現実 :みんなが存在を信じているもの。国、会社など。個人が消えても残るが、物理的に存在はしていない。

脳容量を見る限り、個々の能力では、ネアンデルタール人の方が勝っていた可能性が高いと言われています。しかし、サピエンスの組織のパワーによって彼らの住処を奪ってしまいました。その他の大型哺乳類についても同様のことがいえます。サピエンスが航海術を習得し、世界中の大陸や島々にたどり着いたのと同時期に、それぞれの土地に固有の大型動物、小型動物は絶滅し、生態系は破壊されました(ことを指示する証拠が数々発見されている)。

 

アフロ・ユーラシア大陸に住む、大型動物たちは、数十万年の時を人類種と同じ場所で過ごしてきたため、ちょっとは人類種を恐れるように進化したといわれています。ところが、未踏の地の生物たちは、人類種を恐れることが遺伝子に刻み付けられる前に絶えた。わずか数千年(生物の進化というスケールからみるとわずか)のうちに、サピエンスは、世界に拡がり、そして蹂躙しました。

これは遺伝的な変化ではなく、認知革命によって急速に力を手に入れた結果であり、サピエンスを取り巻く環境は、これに追いつくことができませんでした。

著者はこれらのことの説明の最後に以下のようなメッセージを載せています。

狩猟採集民の拡がりに伴う絶滅の第一波に続いて、農耕民の拡がりに伴う絶滅の第二波が起こった。この絶滅の波は、今日の産業活動が引き起こしている絶滅の第三波を理解する上で、貴重な視点を与えてくれる。私たちの祖先は自然と調和して暮らしていたと主張する環境保護運動家を信じてはならない。産業革命の春改善に、ホモ・サピエンスはあらゆる生物のうちで、最も多くの動植物種を絶滅に追い込んだ記録を保持していた。私たちは、生物市場最も危険な種であるという、芳しからぬ評判を持っているのだ。

農業革命-小麦の奴隷になったサピエンス

複製し、子孫を残す、という遺伝子的な観点から見て、小麦は大々大成功をおさめました。サピエンスを奴隷化し、自分の世話をさせることによって、水、日照を得、病気を回避しながら、世界の陸地の多くを自分の領土として、栄華を誇っています。

一方のサピエンスは、小麦(をはじめとする穀物)の栽培のため、定住し、毎日汗水たらして働くようになり、その結果、人口が増え、密度も大きくなりました。
労働時間が増え、余剰を搾取するエリート層が生まれたました。著者の主張によると、猟採集民は多様な植物、動物を口にしていたため、干ばつなどによる不作に左右されることなく食事にありつけたうえに、多様な食物を摂取していたため、栄養状態も良かったといいます。

しかし、農耕に精を出すと、(栽培可能な植物が限られているため)偏った食事しかできず、栄養状態は悪くなったそうです。

元々は、安定的に食物にありつくために始めたものでした。栽培することができれば、毎年一定の食物が得られるため、生活の安定化に寄与するはずでした。これが、小麦が仕掛けた壮大な罠であったのです。サピエンス側に誤算がありました。農業がうまくいき始めると、人口が増えました。人口が増えると、働いても働いても一人一人の取り分は増えないません。効率化すればするほど、その分人口が増え、栽培に要する土地も増えました。幾世代も経るうちに、人々は狩猟採集の方法を忘れ、後戻りすることができなくなりました。
過酷な労働、不作時の飢餓、栄養状態の悪化を生んだことから、農業革命を罠だったと、著者は表現しました。
歴史上、たびたびこういった致命的な計算違いをしてきました。自らの決定がもたらす結果の全貌を捉えきれないからだと、喝破します。

歴史の数少ない鉄則の一つに、贅沢品は必需品となり、新たな義務を生じさせる、というものがある。

(中略)時間を節約して生活にゆとりをもたらしてくれるはずの、無数の機械や手段を発明した。

(中略)私たちは時間が節約できると思っていたのに、逆に人生のトレッドミルうぃ以前の一〇倍の速さで踏み続ける羽目になり、日々を前より落ち着かず、いらいらした思いで過ごしている。

電話、電子メール、洗濯機、車…、無数に思いつきますね。

以前紹介したように、この農業が発達した時に生まれた「余剰」が今現在我々の生活を取り巻く重要な「虚構」を生み、進歩したのは間違いないでしょう。すなわち、文字、貨幣、エリート、宗教、国家などです。もちろん虚構ではない客観的現実である「疫病」というものも生みました。

5分で読む『父が娘に語る経済の話』|優しく、易しく、愛のこもった経済の話
さて、今回は経済の話です。 「経済の話」とありますが、経済と結びつけて文明論のお話も書かれています。 本書は、ある父親が娘に経済というものの成り立ち、現代の経済的な課題(格差、金融危機など)がどうして存在しているか、ということか...

科学革命-無知から生まれる知識の探求

科学革命は無知を認めるところから始まりました。それまでの世界は、この世のすべては神が知っていて、預言者は、重要なことを聴き、聖典に遺し伝えたという風に信じられていました。そのため、なにかあれば人々は聖職者を頼りました。わからないことは重要でないこととすることで、神の全能感は担保され、人々が知識の探求に情熱を注ぐことは一般的にはありませんでした。

このために、「宗教」と「科学」が対立項として書かれることがあるのでしょうか。

「科学革命」とは科学が生まれたことではありません。下記のようなフィードバックループが生まれたことが革命でした。

学革命のフィードバックループ

すなわち、国力が資源を生み(獲得し)、資源を研究に投入し、研究結果が国力につながるということです。

つまり、科学をテクノロジー(技術力)にしたのが革命であったのです。それまでは驚くべきことに、科学とテクノロジーは別個に考えられていました。

科学が力を生むことを知った支配者は、どんどん資源を投入することにした。科学の発展が、産業と軍事力の発展を生むサイクルが完成した途端、人々の生活が飛躍したのだと説きます。

科学革命が産業革命を生みますが、その裏には富を増大させる資本主義という仕組みがありました。実は、科学革命によって人々の頭の中に「明るい未来」という概念が生まれました。「未来は今より必ず良くなる」という信念が有ったからこそ、借金を原動力とする「資本主義」が発達したのです。

文明は人を幸福にしたか

最後に、「文明は人を幸福にしたか」について論じられています。

が、ここでは割愛します。

さいごに

最後に、人類がオーストラリア大陸に初めて到達した時に出会った、巨大生物たちの描写が個人的にお気に入りなので、載せておきます。

人類がオーストラリア大陸の砂浜に残した最初の足跡は、たちまち波にかき消された。(中略)彼らが前進するにつれて遭遇した奇妙な世界には、未知の生き物が暮らしていた。体重二〇〇キログラム、体長二メートルのカンガルーや、この大陸最大の捕食者で、現生のトラほど大きい、有袋類のフクロライオンがいた。あまりに大きくて、抱きしめたいとも可愛いとも思えないようなコアラが樹上でガサガサと音を立て、ダチョウの二倍もある飛べない鳥たちが平原を疾駆していた。ドラゴンのようなトカゲや長さ五メートルに達するヘビが下草の中を滑るように進んでいった。巨大なディプロトドン(二.五トンもあるウォンバット)が森の中をうろついていた。(後略)

これが想起されました。


いかがだったでしょうか。人類はどこから来てどこへ行くのだろうか。そんな疑問を持った方に、自信を持っておすすめします!

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