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言わずと知れたGAFA(アメリカでは”The Four”)と呼ばれる企業群です。
2020年2月3日の時点で、これら4社の時価総額は約3.9兆ドル(約430兆円)だそうです。
ちなみに、東証1部上場企業の全体で約629兆円。たった4社で東証1部の7割を占めるというのだから驚きです。
GAFAの合計時価総額、4社だけで東証1部企業全体の7割に匹敵-ITmedia NEWS 2020.2.5
シリコンバレーには、他にも強力なテック企業がひしめいています。
知力、体力、熱意を兼ね備えた天才たちが切磋琢磨して、世界的企業に成り上がっていくのです。
なんとそんな超優秀マン(ウーマンも)たちに、成功を知り尽くした「共通の師」がいたというのです。
それが、本書の題材となっている「1兆ドルコーチ」こと、ビル・キャンベルです。
「1兆ドルコーチ」とは、影響を与えたテック企業の時価総額のことを指していますが、とりわけ影響を大きく与えたGoogleとAppleだけでも現在は2兆ドルを超えます。
本書はGoogleのおえらいさん3名(エリック・シュミット、ジョナサン・ローゼンバーグ、アラン・イーグル)によって書かれました。
“How Google Works”でおなじみにお三方です。
本書は、ビルが、どのようなコーチングを行なったかということを通して、ビジネスにおけるチーム、そしてチームを良くする方法を教えてくれます。
“1兆ドルコーチ” ビル・キャンベルってどんな人?
本書の題材となった1兆ドルコーチことビル・キャンベル。
どういう方なのでしょうか。
ビルは、大学アメフトを経験した後、アメフトのヘッドコーチになりました。
ヘッドコーチとしての戦績は芳しくなく、6年連続負け越したそうです。選手を大切にしすぎて、勝ちに徹することができなかったからだと言われています。
そんな彼は、39歳のとき、広告会社に入社し、ビジネスマンとしてのキャリアをスタートしました。
その後、コダックに引き抜かれ、Appleの幹部、INTUITのCEOなどを歴任し、その後コーチとしてシリコンバレーの名だたるテック企業のコーチとして多大な影響力を持ちました。
※INTUITは、FinTech系企業です。
このキャリアの裏には、ジョン・ドーアというベンチャーキャピタリストがいて、ジョン・ドーアの投資先にビルを紹介するという形でプロ経営者として、そしてコーチとしての知名度が上がっていったのです。
彼がAppleの幹部を務めていたとき、かのスティーブ・ジョブズが追放されました。
そのとき、彼はこれに抵抗した数少ない幹部の一人だったのです。
これによってジョブズとの信頼関係が生まれ、その後ジョブズが復帰したあともジョブズの相談相手であり、メンターであり、コーチであり、友人で有り続けました。
さらに、ジョン・ドーアが、エリック・シュミットにビル・キャンベルをコーチとしてつけるように勧めます。
これが彼とGoogleを結びつける最初だったようです。
ビルはコーチングを通して、チームをコーチする方法を教え、いつしか影響を受けたシリコンバレーのリーダーたちは、困難な状況に出くわすとこう考えるようになったといいます。
「ビルならどうするだろう?」
シリコンバレーの天才たちにコーチなんて必要か?
はじめは著者の一人であるエリック・シュミットもそう思ったそうです。「アメフトコーチ上がりのおじさんに教わることなんてあるのか?」と。
ただ、よく考えてみてください。スポーツの世界では、コーチがいるのって当たり前ですよね。前線で活躍する超トップアスリートにはもれなくコーチがいるのです。
それと同じようにビジネス界にもコーチが必要だったのです。
コーチは、離れた視点から客観的に視ることによって、問題や課題を提示でき、そしてそれに対する解決策を提案することができるのです。
ただし、この1兆ドルコーチがしたのは、プロダクトや戦略について「やるべきこと」を指図したわけではありません。
「やるべきこと」を考え決定し実行する、「チーム」に焦点を当てたのです。
チームが勝つ
ビルはアメフト選手、コーチ出身とあってこのことにこだわったようです。
個々がチームのために円滑に動き、チーム全体が大きな力を持って、そして勝つのです。
最高のチーム5つのカギ
序文の著者 ペンシルベニア大学ウォートンスクール教授のアダム・グラントは以下を挙げています。
最高のチームの5つのカギ
1.心理的安全性
2.明瞭さ
3.意味(仕事の意義)
4.信頼関係
5.影響力
ビル・キャンベルはコーチするすべてのチームがこれらを育めるように労を厭わなかったという。
チームをコミュニティにする
企業の成功にとって、会社のためになることに個人としても集団としても全力で取り組む「コミュニティ」が、重要です。
人は職場の協力的なコミュニティの一員だと感じると、意欲が高まり、生産性が上がるのです。
当たり前の話ですよね。チームが足並みをそろえて同じ目的に向かって進むことが、成功につながるのは誰でも容易に想像がつきます。
でも、実際はそうならないことが多い。集団内での対立が起こることなんてざらにあるでしょう。
そういったことを是正するのがコーチの役目なのです。
マネージャーは肩書きがつくる、リーダーは人がつくる
ビルは、「人がすべて」だという考えを持ち続けました。
マネージャーの仕事は、部下が仕事で実力を発揮し、成長し、発展できるように手を貸すことだとし、マネージャーは支援、敬意、信頼を通じて、その環境を生み出すべきだと考えました。
マネージャーの権威は、部下や上司と信頼関係を築くことによってこそ生まれ、優れたマネージャーであれば、部下がその人をリーダーにするという考え方を持ってコーチングにあたっていました。
問題そのものより、チームに取り組む
これもマネージャーにとって大事な視点です。
問題の細かい分析をするのではなく、「チームにその問題を解決できるか?」を考えました。
チームに正しいプレイヤーがいるのか?問題解決に必要なものは揃っているのか?という問によってチームを導きます。
前項のマネージャーの仕事を考えれば、当然のようですね。チームに然るべきリソースが揃っていて、一つのゴールに向かわせることができれば、きっと達成してくれることでしょう。
人を愛する
ビルのやり方のすべてを真似することはできませんが、参考にすることはできます。
信頼関係を築いたり、チームに心理的安全性を持たせるためには、人に関心を持ち、人を愛することが重要だということが、ビルを見ていてよくわかったそうです。
なんだか「人を動かす」で聞いたような内容ですね。

彼は、人をまるごと愛しました。
まるごとというのは、その人の経歴、家族、良い点、悪い点などすべてです。
本書でも触れられていますが、私達は基本的に、公私を分けろというように仕事に私情を持ち込まないことようにと教えられます。
でも彼は、公私すべてに分け隔てなく接し、受け入れ、そして愛したようです。
優しい組織になる
ビルはとにかく人を大切にしたそうです。
敬意を持って接し、名前を覚え、温かい言葉をかけ、家族のことをも気にかけて、言葉より行動でそれを示したそうです。
友人になにかが有ればすぐ駆けつける、約束を守る。
そういった個々の優しさが組織の優しさに繋がります。
また、こういった行動が会社への献身を示し、社員への忠誠につながることがわかっています。
私達が小さな頃から教わっている道徳的なことです。これを当たり前のように実行できる人ってきっと限られますよね。
身の回りに、ごくたまに「この人の言うことだったら聞いてあげてもいい」っていう人はいませんか?
そういう人はきっと上に挙げたようなことが自然にできているのでしょう。
本書は、組織を成功に導く役割にある人(マネージャー、リーダー、経営者)へのメッセージがたくさん込められていました。
また、人としての価値が成功を生むという話もあり、私のようなペーペーの立場でも、今日からちょっとずつ積み重ねることができるのではないかと思いました。
人に関心を持って愛する。人のすべてを受け入れる…。そういった態度によって信頼関係の構築ができ、よりよい仕事につながるのでしょう。
人を愛し、人に愛された1兆ドルコーチについて、より知りたくなったら是非本書を手にとって読んでみてください。
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