ペニスの形には意味があるのでしょうか。
ちんちん、ちんこ、ちんぽなど様々な呼び名で親しまれている私達の男性器ですが、その形に意味はあるのでしょうか?
これほど身近にあるものに関わらず、それについて考えることはなぜか避けられ、多くの人がそれについて知ろうとしません。もしくは、知りたいという意思表明をしません。
よく、身近な疑問から科学が生まれる、と言いますが、こういった性的なテーマは、モラル的に(?)忌避されがちです。
本書は、小さな頃からそんなことに興味を持ち続けた実験心理学者ジェシー・ベリングさんによるエッセイをまとめたものです。
そのため、内容はペニスの形だけにとどまらず、カニバリズム、脳、想像力、小児愛や動物愛、フェチ、潮吹き、LGBT、自殺、自由意志など多岐にわたります。
多岐にわたりますが、そのテーマは「そんなことエッセイにして雑誌にコラムとして載せちゃうの?」というようなものばかりです。
ですが、そこは学者らしく、論文に掲載されたデータに基づく論旨を展開しており、それなりに説得力があります。

ちなみに本書は化学徒御用達、化学同人から出版されています。
化学同人さん、一般向けにもいい本出すんですよねぇ~。
今回の記事では、ペニスの形に意味があるのか、というところを少し紹介したいと思います。
金玉(袋)の機能
それは、精子を冷却貯蔵したいがためです。
男性の方ならご存知のことと思いますが、陰嚢(金玉袋)は、寒いとき縮こまり、暑いときはだらんとします。
これは、陰嚢内の温度を調節するため、陰嚢の表面積をコントロールしていると考えられます。
ではなぜ冷却貯蔵しなければならないのか。
ここでは精子活性化説を取り上げています。
すなわち、人の体温下(~37℃、つまり女性の膣内)で、活動を最大化できるようにするため、生産時および貯蔵時はそれより低い温度でなされる、という考え方です。
つまり、ボクサーパンツのようなピタッとしたパンツはこの陰嚢の機能に逆行するようなものであるため、あまり推奨しない、とも書かれています。
どうして金玉をぶつけるとあんなに痛いの?
妊娠・出産の辛さを男性が体験できないように、金玉に物がぶつかった痛さは女性にはわかりません。
私は野球をやっていましたが、股間にボールが直撃したときのあの鋭い痛みは、できることなら体験したくありません。
どうしてあんなに痛いのでしょうか。
それは、繁殖のためにとても重要な器官だからです。
逆説的に言うと、ちんこを痛がる(=超重要な器官を守ることに長けた)人類が生き残ってきたため、という風にも言えそうです。
オートフェラチオ そんなの無理では?
人体の構造的に、まず無理である。
というのが、通常の見解です。つまりは、ロマン。
しかし、思春期にこれを夢見る男児というのは、かなりの割合でいるとのこと。
本書によると1000人に2, 3人の割合で可能な人がいるらしいですが、旧来、オートフェラチオは病理的な行動とみなされ、これができ、実際にハマってしまった人は、観察の対象になってしまったことでしょう。
まあどうせ凡人には不可能なので、夢想するまでにしておくべきでしょう。

ペニスの形の合理的な理由
- ヒトのペニスは他の霊長類と比較すると異様にでかい(太くて長い)のはなぜか
- ヒトだけが、きのこのような傘(亀頭、亀頭冠)を持っているのはなぜか
まとめてお答えしましょう。
一言でいうと、自分の子孫を残すため、排他的な機能を持っている、ということです。
- でかいペニスで女性の膣を充満させることで、他人の精液を置換しやすくし、
- きのこのような傘(亀頭、亀頭冠)で、膣内にある他人の精液を掻き出す
機能を持っているという説が提唱されています。
えっ?俺のちんこはでかくないって?大丈夫。そのへんのチンパンジーよりでかい(らしい)から。
精液に隠されたヒミツ♥
進化心理学者のチームが精液に関する新しい発見をした!ということについて書かれています。
一緒に暮らす女性の生理周期は同期する!?
これだけでも私にとっては、衝撃の事実なのですが…。
「マックリントック効果」と呼ばれる効果で、女性が発するあるホルモンによってこういった同期現象が起こるようです。
しかし、レズビアンの女性たちにはこの現象が起きない、というのが今回の精液のヒミツを探る、最初の入口だったそうです。
これに気づいた学者さんたちはこのファクターが、精液にあると考えました。
精液に含まれる精子の量は1~5%
これもこれで驚きなのですが、精液には平均1~5%程度の精子(○~~)しか含まれていないそうなのです。
その他は精漿(せいしょう)と呼ばれ、神経伝達物質、ホルモン、エンドルフィン、免疫抑制物質など様々な成分で構成されているそうです
ナマでシた女性の鬱の症状は有意に少なかった
あくまで相関研究だというふうに断っていますが、そこは心理学者の仕事です。
可能な限りの諸条件は揃え、統計的に導かれた結論である、というふうに書かれています。
気になる方は論文を参照しても良いと思います。
この結果を悪用(?)しないようにこの章の冒頭に記された著者の警告を引用しておきます。
これから紹介するデータや情報は、あなたの幸福のほとんどあらゆる面を劇的に高めることを約束するが、一方で、悲劇的な、場合によっては致命的な結果を招くこともありうる。
(なぜペニスはそんな形なのかーp.43)

さいごに
今回紹介したのは、ほんの一部。全33エッセイのうち4つのみです。
冒頭にも紹介したように、カニバリズム、脳、想像力、小児愛や動物愛、フェチ、潮吹き、LGBT、自殺、自由意志など様々なテーマ(でしかも、オモテで議論しづらいもの)のエッセイが掲載されています。
もう一度いいます。出版社は化学同人さんですが、少々持ち歩きづらい表紙となっております。
カバーを外せば、一見外で出しても恥ずかしくなさそうに見えますが、残念、背表紙に「ペニス」と大きく書かれてしまっています。
公の場で議論できないテーマだからこそ、本を読んで新たな知見を得たい、そんな方におすすめします。

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